04.幸
父上、お元気ですか?僕は元気です。
「私の方が速かった!」
「いいや私の方が速かったぞ三木ヱ門!お前は頭だけではなく目も悪いようだな!」
「何を〜!?今日という今日は許さないぞ滝夜叉丸!」
今日は4年生全員参加のランニングがあった。
僕は疲れてしまって途中で歩いてしまったけれど、目の前でケンカしてる2人はものすごく速かった。
もちろんお互いがお互いに負けないように必死に走っていたからなのだけれど。
そして今、2人はどちらが一番だったのかでケンカしている。
僕には2人ともが一番に見えたんだけどなあ。
けどそろそろ止めないと、滝夜叉丸くんは戦輪を取り出しているし三木ヱ門くんは大砲を持ってきているし危ない。
「あの、2人ともそこらへんにしといた方が…」
僕の静止もむなしく、2人の互いを罵る言葉にかき消されてしまった。
「おやまあ」
「うわあっ」
突然、僕の右隣からずぼっという音と共に地面の中から綾部くんが出てきた。
「び、びっくりしたあ…どうしてそんなところから出てきたの?綾ちゃん」
「穴を掘り続けてたら何だか方向を間違えてしまったようで」
そんな理由でいきなり地面から出てくるってすごい。やっぱり忍者の道は奥深い。
「ね、そろそろあの2人止めないと危ないよね?綾ちゃん一緒に止めようよ」
僕は目の前で繰り広げられる2人の戦いを見ながら言った。
「いいんですよあんなの。放っておけば」
「でも、怪我しちゃったら…!」
2人が持っているのは殺傷能力のある立派な武器。
もしものことがあればタダではすまないだろう。
しかし僕のそんな心配をよそに、綾部くんはマイペースに言い放つ。
「どっちもどっちですよ。無意味なケンカして傷ついたって自業自得なんですから」
「綾ちゃん…手厳しいね…」
「あの2人はああやってケンカさせておくのが一番いいんです。ケンカしないときはしないで互いの愚痴ばかり言うのですから」
綾部くんが呆れたように溜息をつきながら言った。
「そうなの?」
「そうですよ。タカ丸さんには遠慮して同級生の悪口なんか言えないのでしょうが、私の前だと愚痴ばかりなんですよ」
確かに僕と三木ヱ門くんか滝夜叉丸くんのどちらかと2人きりのときだとあまり悪口は聞かないような気がする。
やっぱり僕が年上だからって気を使わせちゃってるのかなあ。
今はケンカして大騒ぎをしてる2人だけど、2人とも優しい子たちなんだなあ。
「ケンカしてないときでさえ互いのことが気になってしょうがないのなら、ああやって真っ向勝負させといた方がいいんです」
綾部くんも2人のケンカをぼんやり眺めながら言った。
「それに、2人とも相手を本気でやっつけようとは思ってないのですから」
「と、言うと?」
「だって本当に互いが嫌いなら絶対口なんてきかないはずだし、本当にやっつけたいなら何でもないときに奇襲すればいいんです」
確かに、そう言われてみればそうだ。
本当に嫌いならそうすればいいのに2人はそうしない。普通にお話してるときもあるしケンカは合意の上でやっている。
「ケンカだって疲れれば勝手に止めるのですから放っておけばいいんです。あれが彼らの愛情表現なんですから」
「「愛情なんかないっ!!」」
綾部くんがわざと最後の方を強調して大声で言うと、それを聞いた三木ヱ門くんと滝夜夜叉丸君がこちらに向かって叫んだ。
僕は2人の反応が息ぴったりだったものだから笑ってしまった。
「おやまあ聞こえてたか」
「聞こえるように言ったんだろうアホはちろー!」
滝夜叉丸くんが怒って綾部くんに向かって叫んだ。
「まあそれはそうとお腹が空いた。タカ丸さん、町の甘味亭に行きませんか?もちろんそこの2人のおごりで」
2人で、と言ったときに、綾部くんは三木ヱ門くんと滝夜叉丸くんを指差した。
「「勝手に決めるな!」」
「おやまあ息ぴったり。けど2人が武器使ってケンカしたせいで君たちの後ろの木がぼろぼろになったこと、先生に言うよ」
さきほどからのケンカで、確かに2人の周りにあった木や茂みがぼろぼろになった。
ケンカするのは勝手だけれど、学園に被害をもたらしたとなれば必ず先生に説教されてしまうだろう。
2人はそれを恐れてか、渋々おごりを承諾した。
「なんか悪いねえ…」
「タカ丸さんのせいじゃないですよ、このアホヱ門が周りに配慮しないから」
「お前だって戦輪で木を切っただろうがバカ夜叉丸!」
「ほらほら2人ともさっさとお財布の用意したらどうなの。早くしないと先生にこの光景ばれるよ」
綾部くんがそう言うと、2人は苦い顔をしながらも支度をしに長屋に走って行った。
「私たちは外出許可証をもらいに行きましょう」
「そうだね」
僕らは外出許可証をもらいに行き、そして長屋に外出の支度をしに戻った。
みんなで甘味亭。楽しみだなあ。
彼らは僕より年下だけれど、いつも僕におもしろい話をしてくれたり忍術を教えてくれたり、僕を楽しませてくれる。
最初は年齢の違う子たちと仲良くできるかなと不安だったけど、そんなものは杞憂だった。
今じゃ学園一仲良しだぞーって、学園中に自慢したいくらい仲良しだ。
滝夜叉丸くんも、三木ヱ門くんも、綾部くんも。みんないい子で僕はみんな大好きだ。
僕はこんな仲間に囲まれて毎日が楽しくて、今はとっても幸せ。
授業も委員会も放課後も、全部楽しいよ。
僕は支度を整え、暗黙の了解の集合場所、門へと向かった。
「タカ丸さーん、早く早くー!」
滝夜叉丸くんが僕を呼び、手招く。
「置いていっちゃいますよー!」
三木ヱ門くんも笑顔で僕を呼んでくれる。
「こけないでくださいねー」
綾部くんもいつものマイペースさで僕に言葉を投げかける。
僕はそれらがうれしくて、つい笑顔になって大きな声で返事した。
「うんっ!」
さあみんなで今日も楽しく、おいしいもの食べよう!
父上、お元気ですか?僕は元気です。
僕が編入してからもうどれくらいの日が経ったでしょう。
毎日がとても新鮮で習うこと聞くこと見るものすべてが真新しくて、すごく楽しいです。
同じ学年の子たちともすっかり仲良しさんになりました。
滝夜叉丸くんは同級生の三木ヱ門くんといつもケンカしてるけど、頭がよくて戦輪っていう武器を使いこなすすごい人です。
三木ヱ門くんは滝夜叉丸くんとケンカするけど、大砲とか過激な武器の扱いがとても上手です。
綾部くんはいつもぼーっとしてるけど、頭もいいし罠をしかけるのが上手で、特に落とし穴を作るのがすごく上手いです。
みんな僕が年上だからか気を使ってくれて、とても優しくしてくれます。
忍術に関しては僕の方が年下のようなものだけれど、でもみんな僕を見下さず丁寧に忍術のことを教えてくれます。
みんなで町に出かけたり、誰かの部屋に集まって怖い話したりするのがおもしろいです。
忍者は危険な仕事で、覚えることもいっぱいあって大変だけれど、僕は今ここにいてとても幸せです。
父上も、一度僕がお勉強してる姿を見に来てください。
今度学園がお休みになったら帰ります。一度僕の同級生の滝夜叉丸くんたちも連れてきていいですか?
またお手紙書きます。では、また。
END.
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最近4年生のまったりしているお話が大好きでありまして。
少々三木滝、綾タカ綾っぽくなりましたが趣味です(←
タカ丸は心の中では綾部くんって呼ぶけど口に出すときは言いやすいので綾ちゃん呼びです。
こんな4年生の日常が大好きだ!