06.華
「あれ?綾部?」
「こんにちは」
学園の裏山を散歩がてらぶらぶらしていたら、何故か後輩であり恋人でもある綾部に出会った。
「何してんのこんなとこで…」
「いや、別になんでもないです」
そう言う彼は泥だらけ。なんでもないわけがない。
「また落とし穴掘ってたのか?」
彼は学園内にもいくつも落とし穴を掘っている、罠好きな不思議っ子だ。
「はい」
「でもこんなとこじゃ誰も落ちないだろ?」
「そう思って自分が落ちてみました」
「…………」
……何故…………。
彼が泥だらけの理由は分かったが、彼のとった行動の意味が分からない。
「怪我はないのか?」
「大丈夫です」
彼がこう言ったときは、少し怪我した証拠だ。“少し怪我しちゃったけど大丈夫”の意。
彼は怪我がなければきっぱりと“ありません”と言うから。
不思議っ子な彼の言葉の意味を汲み取るには、恋人の俺でさえも苦労する。
「どこ怪我したの?」
「大丈夫です」
「いやそうじゃなくって!放っておくと大変なことになるから、ちゃんと見せて」
「はい」
一度は渋るのに、なぜかあっさり傷口を見せてくれる。怪我したらいつもこうだ。…何でなんだろ。
彼は足や腕に擦り傷をいっぱい負っていた。
きっと落ちるときは何ともなかったけど、上るときに苦労したんだな。
「あーあ、血が出てるじゃないか。早く帰って手当てしないと」
「はい。では私はこれで」
「……」
え、何この空気?どう見ても“先輩一緒に行きましょう”な雰囲気じゃないよな?
おい綾部…それはちょっと素っ気無さすぎだろ…!せっかく見てあげたのに!
いやでも俺が治療してあげられるわけでもないし、こんなところでデートなんていう気分にもならないしな…。
あーあ。せっかく会えたのになぁ。仕方ない。今度の休みにならないと二人きりでお出かけは無理か…。
俺がそんなことを悶々と考えつつ、綾部の後姿を見送っていたら、不意に綾部がこっちを向いた。
「先輩。何してるんですか。置いて行っちゃいますよ」
え…?
「あ、綾部…それはもしや、俺と一緒に帰ろうってこと?」
「当たり前じゃないですか。それとも私と一緒は嫌ですか?」
「い、いや!違う!寧ろすっげー嬉しいけど!!でもさっきお前“私はこれで”って…」
「あ。やっぱりちゃんと言えばよかった。伝わってなかったですね。じゃあもう一度。私はこれで帰るので先輩も帰らないと夕飯に間に合いませんよ」
長いな!!長いの省略した結果があれか!!肝心なトコ略すな!!
はあ…俺ってまだまだだな。いつになったら綾部に近付けるんだろ。
「久々知先輩。帰りましょう」
俺がげんなりしていたら、綾部がこっちを見て言った。
「あ、うん!」
俺が慌てて返事をした瞬間。彼はこっちを向きながら…ふんわり、笑った。
「――――――――………………っ!!!///」
か、かわいい…!
綾部が笑うの珍しいから、不意打ち食らって俺は撃沈状態。顔なんて真っ赤に決まっている。
ここは土と木だらけの裏山。
人もあんまり来ないから、そんなに綺麗なところじゃないけど。
こんな素朴な場所にだって、綺麗に華が咲いたんだ。
いつか俺だけの華だと、みんなの前で胸張っていえるような、綺麗な華が。
END.
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久々綾でしたーwヘタレな先輩と不思議っ子後輩萌ー!!
何か最後久々綾の関係は秘密だみたいな感じになってますが、みんな知ってますよ(笑
ただ、久々知はヘタレなので、あの同級生のそっくりさん夫婦の片割れみたいに「俺のもんだー!」って人前では言えないんですよ
だから、いつか言ってやりたいなーと思っている豆腐小僧なのです^^