はっぴーくりすます!09
雪舞う学園の庭を歩いている最中に、八左ヱ門が言った。
「もうクリスマスか…」
三郎が言った。
「何だハチ、時が過ぎるのが矢の如く感じられるか?年だなお前も」
また八左ヱ門が言った。
「ちっげえよバカ!」
雷蔵が言った。
「今年もおばちゃんのごちそう楽しみだねー」
兵助が言った。
「豆腐あるかなあ」
八左ヱ門が言った。
「…豆腐かよ…」
4人は雪舞う学園の庭を、そんなことを言いながら歩いていた。
勘右衛門は部屋の真ん中に置かれたこたつにうずくまっていた。
「あーもう何でこんな寒い中にわざわざ雪なんて降るかなあ。余計に寒いじゃないか」
そんな独り言をぐちぐちと言いながら。
ぼうっと外の方向を眺める。扉は開けていない。寒いから。
その向こうに広がっているであろう銀世界を思うだけで寒さが増す。
そんなことを思いたくなくて、勘右衛門はテーブルに横向きに頭を乗せた。
こたつの暖かさに全てを委ねてしまいたい。
この暖かさを感じながら、勘右衛門はぼんやり思う。
「(ああ、そういえばこんな風にのんびりとこたつにうずくまるなんて今までないことだったなあ。今までずっと出なかったし。16年だもんなあ。)」
己の境遇を決して嘆いているわけではない。
そういうわけではないけれど、16年の沈黙は長すぎた。
「(それが今年、やっと出番があって、名前ももらって…今ここにいる)」
何もなかった日常が変わった。
広い世界に飛び出した。
あの光り輝いて見えた世界の中に、今自分がいる。
「この年は俺にとって一生忘れられないなあ…」
思わず口に出してしまうほどに、心からそう感じる。
「(サンタは俺に一足早いプレゼントをくれたんだ)」
しかもたくさん。
ひとつは出番。ひとつは名前。ひとつは居場所。
そして…。
ドタバタと、忍者の学校らしからぬ騒がしい足音が響く。
勘右衛門は何事かと思い、身を起こした。
足音が部屋の前まで来て、騒がしさが止むことなく閉められていた扉が開く。
「「「「かんえもん!!」」」」
開いた扉の先には、勘右衛門と同学年の4人の姿。
三郎と雷蔵と八左ヱ門と兵助。
雪の中彼らが歩いていたのは、ここへ来るためだったのだ。
八左ヱ門が笑いながら言った。
「何だお前、まだこたつにうずくまってたのか。早く行こうぜ!」
三郎が言った。
「他の学年に料理取られるぞ」
雷蔵が言った。
「毎年クリスマスはね、食堂のおばちゃんがごちそう作ってくれてみんなでパーティするんだよ!」
兵助が言った。
「そういや言うの忘れてた。豆腐あるといいな!」
勘右衛門は1人1人の言葉を素直に聞いていた。
兵助にはツッコミを入れたかったけれど。
でも、彼らの言葉を脳内で復唱するたびに胸がざわざわし始める。
このざわざわは喜びだ。
嬉しいだとか楽しみだとか、いろんな感情が混ざって大きな喜びになっている。
「(暖かいものは何もこたつだけじゃないんだ。)」
そう思った勘右衛門はこたつの電源を切って、仲間の方を見ながら立ち上がり元気よく返事をした。
「うん!」
返事したときの勘右衛門は、雪なぞ降らない快晴のときの太陽みたいな笑顔だった。
「(サンタは俺に一足早いプレゼントをくれたんだ)」
しかもたくさん。
ひとつは出番。ひとつは名前。ひとつは居場所。
そして…。
「(寒い中俺を迎えに来てくれる、最高の仲間!)」
END.
--------------------------------------------------------------------
09クリスマスSS。
今年は何はなくとも勘ちゃんだろって思って勘ちゃんメイン(笑)
勘ちゃんが幸せなのがいいんだ私は!
ハッピークリスマス!