夏祭り
※時代背景とか無視して普通のお祭りが行われてます;;
☆6年生☆
夕刻、正門の前に集合。もちろん外出届をきちんと提出してから。
そんな約束を交わしていた6年生6人組は、その約束通りに全員が正門前に集合した。
彼らは普段履きなれない下駄をカランコロンと鳴らしながら、祭り会場までの道を歩いていた。
「私はー、氷菓子と、冷やし果物と、綿菓子と、焼き鳥と、焼きそばと、お好み焼きと、それから…」
己の髪の色と似たような、藍色の浴衣を着た小平太が指折り数えながら言った。
「小平太、そんな慌てずとも食い物は逃げん。一気に食べると腹を壊すぞ」
笑いながら小平太を諭すのは、白地に亀甲柄の浴衣を着た仙蔵だ。
「でもおいしいものいっぱい食べるの楽しみだよねー」
団扇をぱたぱたさせながら、灰色の浴衣を着た伊作が言う。
「お前食い物落とすなよ」
と、黒の浴衣を着た留三郎が言えば伊作はむぅ、と頬を膨らませる。
「忍びが食い物のことでぎゃーぎゃー言うな」
相変わらずの忍者っぷりを見せつけたのは文次郎。彼は紺色の浴衣を着ている。
「…金魚…」
文次郎に返答するわけでもない言葉を、伊作より濃い灰色の浴衣を着た長次が呟いた。
「金魚は持って帰っても飼えないだろう」
留三郎が苦笑しながら言った。
「生物委員に頼め!」
小平太がにんまりしながら言う。
「さあ、もう着くぞ。迷子になるなよ、どこぞの3年みたいに」
どこか楽しそうに言ったのは仙蔵だった。
「これ1個ください!」
「小平太、まだ買うのか?さっきあれだけ焼き鳥食ってたのに」
さっきから見る食べ物全て買って食べている小平太に文次郎が呆れたように言った。
「いーのいーの!今日はぶれいこーだって!」
「…それは意味も使い方も違う…」
長次が注意したが、小平太は全然気にしていないようだった。
「ねー見て見てー!これ、留さんが取ってくれたんだよー!」
嬉々として伊作が駆け寄ってきた。後ろには留三郎も続く。
伊作の手には20センチほどのピンク色したかわいいウサギのぬいぐるみがあった。
「射的か」
仙蔵が尋ねると、留三郎がああ、と肯定する。
「ま、これくらいは当たり前に取れるよ、日頃の努力の賜物だな」
と留三郎が誇らしげに言うと、すかさず文次郎。
「アホのは組が何を言うか。どうせそれも偶然だろう」
「何だと?」
「伊作、それよりいい物を取ってきてやる!射的屋はどこだ!」
「伊作はこれが欲しいと言ったからこれを取ってあげたんだ!迷惑極まりないことをするなばか!」
「はっ!じゃあこれ以上の物は取れないと言うのか愚か者!」
「何だとー!よし、こうなったらどちらがいい物を取るか勝負だ!」
「望むところだ!」
2人は大声で言い争いながら駆けていこうとする、が。
「やめんかバカ共」
仙蔵と長次がそれぞれ文次郎と留三郎の頭をボカッ、と殴ると2人は痛む頭を抱えてうずくまった。
「今はそんなことしてる場合ではなかろう。早く空を見ろ」
仙蔵の言葉の後に、皆は揃って空を見上げた。
程なくして光の筋が天に昇り、それが大輪の火の花を咲かせ夜空に散った。花火の始まりだ。
次々打ち上げられる花火に6人は見とれ、小平太ですら大人しく空を見上げ続けた。
こんな綺麗な空を、大切な仲間6人と一緒に見れたこと。
彼らにはそれが何よりも幸せなことだった。
来年は、自分たちの運命がどうなっているか分からないけれど、それでもまたみんなでここに来れますように。
6人は同じ願いを胸に抱き、火の花が咲き続ける空を眺め続けていた。
「よし、花火も見たし、今度は何を食べるかな!」
「まだ食う気かお前は!」
☆5年生☆
「おーい、準備できたかー?」
そう言いながら雷蔵と三郎の部屋の扉を勢いよく開け放ったのは、濃い緑の浴衣を着た八左ヱ門だ。
「八、勢いよく開けすぎ。壊れたらどうしてくれる。後、ノックくらいしろ」
藤色の浴衣に身を包んだ三郎が呆れたように八左ヱ門を見て言った。
「まあまあ。僕たちは準備できたよ」
柔らかく笑いながら、三郎と同じ浴衣を着た雷蔵が言う。
「兵助は?」
「あいつは先に正門に言ってるよ。俺たちの外出許可証取りに行ってくれたんだ」
そして3人で正門へ行くと、やはり兵助が待っていた。彼は白地に青の縦線が引かれた浴衣を着ていた。
初めて兵助の浴衣姿を見たとき八左ヱ門が豆腐色か、と思ったが口には出さなかった。
頭の中で白=豆腐=兵助の等式が成り立っていることが、悔しくもあり悲しくもあったのだ。
「じゃあ行くか」
兵助の一言で4人は正門を出て歩き出した。
祭り会場はすでに人でいっぱいだった。
落ち着いて食べたい、という気持ちがあった4人は露店で食べ物や飲み物を買い、これから始まるであろう花火が見えるような場所に腰を下ろし、買った物を広げた。
「露店に豆腐がないということはどういうことだ」
兵助が心底不愉快そうに言った。
「豆腐なんてこんな祭りのときに好き好んで買うやつなんざお前しかいないだろうよ」
焼きとうもろこしにかじりつきながら三郎が返事する。
それに対し兵助は、これは差別だとか食べ物も平等にだとかぶつぶつ言いながらたこ焼きを頬張った。
「花火早く始まらないかなー」
雷蔵はぼんやり空を見上げながら呟くと、膝に乗せた焼きそばに手をつけようとした。
「あー!」
すると兵助が突如叫んで雷蔵の動きを止めた。
「え、何?僕何かした?」
「雷蔵、それを食べてはいけない!はっちゃんを食べてはいけない!」
兵助の言葉に、それまで焼きいかを食べていた八左ヱ門がぐっと言葉を詰まらせた。
「それは俺か!?」
「はっちゃんの命、俺が守ってみせる…!」
ようやくツッコミを入れた八左ヱ門の言葉も兵助は無視して雷蔵に迫る。
「ど、どうしよう三郎!八を食べたらダメだよね!?でも食べなきゃもったいないし…!」
「なぜ迷う雷蔵。八なんか食っちまえ」
「おい三郎ちょっと来い!雷蔵もなぜ兵助を信じる!?」
何とか焼きそばを守ろうとする兵助、食べるか食べまいか迷う雷蔵、食えと命令する三郎、彼らにひたすらツッコむ八左ヱ門。
そんな騒がしい彼らをよそに、紺色の空に大きな大きな花火が上がり、4人を照らした。
花火に照らされた4人は騒ぎを止め、引かれるように空を見上げた。
赤、青、緑、黄色、紫。様々な色の火が花となって空に咲く。
先ほどの喧騒も忘れ、4人は大人しく空の芸術を胸に焼き付けていた。
いつまでこうして皆と共にいられるのか。
忍者として生きていく以上、その答えに明確な結論はつけられない。
しかしだからこそ、こうやって一緒にいられるひとときをこの上なく大切にして。
また、みんなでここに来れたらいいな、と誰もが願っていた。
花火は14歳の心を打ち続けた。
結局雷蔵は三郎の言うとおりに焼きそばを食べた。
「はっちゃん…君といた日々は忘れない…!」
「だから俺ここにいるって!生きてるって!墓建てるなしかもそこら辺にあった棒で!」
☆4年生☆
滝夜叉丸と三木ヱ門は同時にタカ丸の部屋の前で鉢合わせした。
仲が悪い2人だが今は争っている場合ではないと分かっているから、2人は何も言わずタカ丸の部屋の扉を開けた。
「タカ丸さん、迎えに来ましたよー」
薄い青の浴衣を着た三木ヱ門が部屋の中に向けて言った。
その後ろに薄桃色の生地に赤い花が大きく描かれている派手な浴衣を着た滝夜叉丸が続く。
「はーい」
タカ丸ののんびりとした返事が聞こえてきた。
タカ丸は紺色の浴衣に身を包みそこにいたが、いたのはタカ丸だけではなかった。
「喜八郎!?いないと思っていたらこんなところに…!」
滝夜叉丸が驚きの声を上げた。
そこにはタカ丸と共に喜八郎がいたのだ。彼は薄い紫の浴衣を着ている。
しかもタカ丸に結われたのか、髪の毛はまん丸のお団子に結われている。
「だって滝たち準備が遅いんだもの。だから先にタカ丸さんと一緒に遊んでたの」
「ねー」
綾部の言葉にタカ丸がうなずく。
「はぁ。準備ができたのなら、早く行こう」
三木ヱ門が促し、4人は立ちあがり部屋を出た。そして正門を出て祭り会場へと急ぐ。
「三木ヱ門!次は金魚すくいで勝負だ!」
「望むところだー!」
会場に着くなり、滝夜叉丸と三木ヱ門はこの通り勝負事をしてばかりだ。
6年生の文次郎と留三郎のように顔を合わせれば喧嘩する2人だが、彼らを止める者はない。
タカ丸も最初は止めようとしていたのだが、喜八郎から「放っておいていいです」と言われて今は傍観している。
滝夜叉丸と三木ヱ門は止めたってどうせ喧嘩し続けるのだ。それが彼らの関係なのだから。
喧嘩することで心を通わしている関係なのだ。だから放っておいても気が付いたら喧嘩は終わっていたりする。
勝負ばかりする2人をよそに、タカ丸と喜八郎は思い思いの物を飲み食いしていた。
「…僕は、いつまで」
左右に露店が並ぶ道を歩く途中、タカ丸がぽつりと漏らした。
喜八郎はその言葉を聞き逃さなかった。きっと後に続くのは、ここにいられるのか、という言葉であるだろうことも予測していた。
ここというのは忍びの世界であり、4年生4人がいる場所のことだ。
タカ丸は髪結いで歳が違う異端な自分が、いつまでこうしてみんなで楽しく騒いでいられるのか、幸せなこのときを共に過ごせるのか、それが気がかりなのだ。
いつもは別に悲観的ではないタカ丸が、唯一不安になれること。それが離別だった。
喜八郎はタカ丸を見上げた。タカ丸は困ったように笑いながら「何でもない」と言った。
「…私はですね」
喜八郎がまっすぐにタカ丸を見ながら言った。
「貴方を置いて行きません」
喜八郎はそう言って、すぐそばの露店に綿菓子を買いに行った。
タカ丸はそんな喜八郎の背中を見ながら、嬉しさが胸を支配しつくし、いつの間にか微笑んでいた。
「「タカ丸さん!」」
勝負をしていたはずの滝夜叉丸と三木ヱ門がタカ丸を呼ぶ声が背後からした。
「人ごみの中でぼうっとしていたら危ないですよ!」
そう慌てたように言う三木ヱ門の手には金魚がいっぱい入った袋が下げられていた。
「喜八郎は…ああもう何勝手に綿菓子なぞ買っているのだ!タカ丸さんを放っておいて!」
綿菓子を買いに行った喜八郎を見つけた滝夜叉丸の手には、ヨーヨーが様々な色のたくさんぶら下がっていた。
2人とも勝負の過程で取ったものだろう。ヨーヨーはまだしも金魚はどうするのだろうか。
そんなことを考えたタカ丸は苦笑を漏らした。そのうちに喜八郎も戻ってきた。
「おやまあ2人ともいつの間に戻ったの」
「お前なあ、タカ丸さんを置いて何してるんだ」
滝夜叉丸が呆れたように言うが、それをタカ丸が遮った。
「綾ちゃんは置いて行かないよ」
タカ丸がにっこりと言えば、みんなは黙った。
「ほら、綾ちゃんはちゃんとここに戻ってきたし」
「そうだよ2人とも。私がそんな薄情者に見えるの」
綾部が滝夜叉丸と三木ヱ門をバカにしたように言う。
「あのなあ、だからと言って…」
滝夜叉丸はなおもぐちぐちと文句を言う。自分より年上なのにそれでもタカ丸に世話を焼いてしまう。
それはタカ丸を大事にしている証拠だ。三木ヱ門にしても、喜八郎にしても。
やっぱりずっと一緒がいいなあ、とタカ丸は思った。ずっとずっと、この仲間と一緒に。
「ほらみんな、早く花火が一番見えるとこ行こう!」
タカ丸はそう行ってみんなの手を引いて駆けだした。
「(まずは、みんなで一緒に花火を楽しまなければ!)」
「…金魚…どうしよう…」
「生物委員会に懇願するしかないな…」
一応、生物委員が預かるという形になった。
夏は始まったばかり!
私の好きなCP色が強めです…ごめんなさいどうしてもそうなっちゃうんです><
END.
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上級生で夏祭り。
4年なんてタカ丸愛されまくり…!みんなタカ丸が大好きなんです!
小平太は何でもかんでも食いまくると思ってます(笑い)
これ3年生は迷子組の世話が大変で祭りどころじゃなくなるんじゃないかな!