はっぴーはろうぃん!









秋風が涼しく、過ごしやすい季節になったことをひしと実感する今日という日。
図書室にて本を貪っていた三郎は、ある1冊の本を見つけた。
普段本を読まない彼が図書室に来たのは、本日の図書当番である雷蔵のためなのだが、雷蔵の周りをうろうろしても邪魔と言われるばかりなので、仕方なしに本を漁りだしたのである。
そんな三郎が発見した本には、「南蛮行事のすべて」と書かれてあった。
未だ行ったこともない南蛮にはどんな行事があるのだろうと、三郎はその本に興味を持ち、そして本を開いた。
「…知らないものばっかりだなあ」
本には聞いたこともない名前の行事が連なっていた。
知らない行事ではあるが、内容を見ると面白そうな行事も多々ある。
「お、ここら辺は今月の行事か、なになに…『はろうぃん』?」
三郎は本の中の10月の行事の箇所に目を止めた。
書いてあった行事はハロウィン。
子供たちが仮装して、近所の家々にお菓子をねだり歩く行事だ。子供たちは「お菓子をくれないとイタズラするぞ!」などと脅しをかけてお菓子をいただく。
「とりっく、おあ、とりーと…お菓子かイタズラか選んで、か…」
ハロウィンにお決まりの文句を呟いた三郎は、そのページをしばらく眺めていた。
「…これは使える…!」
三郎はそう言って、その本を借りに雷蔵の元へと向かった。







「ハチー!」
夕方、学園内の庭を歩いていた竹谷の名を、三郎は叫んだ。
「えーっと、三郎?」
「合ってる」
三郎は普段、同級生の雷蔵の姿をしているために普通の人はどっちがどっちだか全然分からない。
それは彼らの友人である竹谷も同じだった。
けれど雷蔵が大きい声を張り上げてばたばた走ってくるわけもないので、今回は竹谷にも判別はついたのである。
「どうかしたのか?」
「あのさ、この本見てくれよ」
三郎は昼間に借りた本を竹谷に見せた。
「『南蛮行事のすべて』?」
「そうそう。で、これ見てみろよ!」
「どれどれ…『はろうぃん』…?子供が近所の家を歩きまわって、お菓子をもらう…」
竹谷は文章を指でなぞりながら読んだ。
「でさ、ここがおもしろいんだよ。『お菓子をくれなかったらイタズラするぞ!』だって」
「へえ。『とりっく、おあ、とりーと』お菓子かイタズラか選べ、か…」
竹谷も昼間の三郎のようにお決まりの文句を呟いた。
「何かさ、これさ、使えるんじゃね?」
三郎が笑いながら竹谷に言った。
「使えるって…何に?」
三郎の言葉に、竹谷は首を傾げた。
「分かんないかなあ…ほら、ということはさ、お菓子くれなかった子にはイタズラができるってことじゃん!」
「………っ!三郎、お前天才!」
竹谷は親指をぐっと立て、三郎も得意げに笑った。
「そうと決まったら実行するぞハチ!」
「よしきた!…そう言えば仮装って何すればいいの?」
「さあなあ。俺いつも仮装してるしなあ」
「じゃあ普通の格好でいいか」
「そうだな」
2人は早速ハロウィンの醍醐味を消し去り、各々の欲望のために動いた。







月が黄金に輝き、真っ黒な夜に映える。
そんな頃に、三郎はろうかをうろうろしていた。
あと5歩ほど歩けば自室に到達するという距離に、だ。
「よし、そろそろ行くか!」
三郎は意を決して、我が部屋へと向かった。
自室の前に着くと、三郎は勢いよく障子を開け放った。
「雷蔵、とりっくおあとりーとぉ!」
「うわっ!びっくりした…え、何三郎、今何て言ったの?」
机に向って本を読んでいた雷蔵は三郎の突然の叫びに驚き、机を背にして三郎と向き合った。
「とりっく、おあ、とりーと。ね、雷蔵今お菓子持ってる?」
「とりっく…?お菓子?お菓子は持ってないけど…何、おなかすいたの?」
三郎は雷蔵の言葉ににやりと笑い、顔をずいと雷蔵の近づけた。
「え、何、どしたの」
雷蔵は三郎の行動に驚きを隠せないでいる。
「そっかーなら残念だなー。お菓子持ってないならイタズラしないとな!」
「え、え?何、何なの、って、うわあっ」
まだ混乱している雷蔵を、三郎はいきなりぎゅうっと抱きしめた。
「イタズラしちゃうぞー♪」
「イタズラって何!?何でそんなに楽しそうなの!?ってこらあっ脱がすなあああ!!」
雷蔵の声も空しく、結局は三郎にイタズラされてしまうのであった。







「へーすけー!とりっくおあとりーとぉ!」
「うわ!…何だハッチーか…びっくりした…」
「何かまた奇抜なあだ名を俺につけたね兵助」
部屋で火薬庫の保管品リストを見ていた久々知もまた雷蔵同様、突然の竹谷の訪問に驚いたようだ。
「で、何。何か用事?さっき意味不明なことを口走ってたけど」
「とりっくおあとりーとだよ!」
「何それ」
久々知もまたハロウィンを知らないようで、首を傾げる。
「まあまあ。ねえ兵助、今お菓子持ってる?」
「お菓子…?そんなものはない」
久々知の言葉に、竹谷は心の中で思い切りガッツポーズした。
「じゃあさ、イタズラ…」
「お菓子はないけどこれならあるよ」
「へ?」
久々知は押し入れの中をがさごそと漁り始めた。
「はい、これあげる。お腹すいてるんだろ?」
そう言って久々知が竹谷に渡したものは、お皿にのった白くて四角い豆腐だった。
何でこんなものが押入れにあるのかは竹谷には分かる。
久々知は押入れの下の方にに木箱を置いてその中に氷を入れて、簡易的な冷蔵庫を作っているのだ。
そのおかげで彼の豆腐のストックは費えることがない。
さすがは豆腐小僧と言ったところか。
「それ、食べちゃっていいよ。明日食べようと思ってたけど、ハチがお腹すいてるんならあげる」
竹谷はそうじゃなくて!と反論したかったが、にこやかに言う久々知に文句を言うことはできず、久々知に割りばしももらって豆腐を食べた。
「おいしい?」
「…ん、おいしい」
本当はもっと他に食べたかったものがあるがと、柔らかい豆腐を噛みしめながら竹谷は思うのであった。







「はろうぃん楽しかったなー」
「…そりゃあよかったね」
翌日、のびのびとしながら言う三郎に、竹谷はうらみがましい視線を浴びせた。
「なにハチ、イタズラさせてもらえなかったの?大方お菓子はないけど豆腐があるよって言われて何もできなかったんだろ」
「……うるせーなー!そうだよ!豆腐食って帰ったよ!」
図星を突かれた竹谷は躍起になって三郎に突っかかるのであった。



はっぴーはろうぃん!





END.







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5年生(鉢雷+竹久々)でハロウィン話でしたw
鉢雷は成功するけど竹久々は失敗すると思うんだ。
っていうか竹谷の性格が掴めないから、どんどん出して欲しいなあ…!
事の真意を知った久々知は豆腐でジャックオランタン作ると思います(笑)