クリスマスの夜









「雪、降らないね」
マツバが障子を開けて、窓の外を見ながら言った。
「雪がそんなに見たいか?」
「うーん…見たいだけかな。余計寒くなるのは嫌だしなあ。でもほら、ホワイトクリスマスってやっぱりいいじゃない?」
窓から目を放したマツバが、俺のいるこたつのところまで戻って来て、四角いテーブルの俺がいるところの90度右に座りながら言った。
今日はそう、クリスマス。
普通なら外へ出かけて自然公園に飾られている大きいツリーを見に行ってコガネ百貨店でプレゼント買ってレストランでご飯食べたりするんだろう。
でもあいにく俺たちは寒さに弱くて、外に出てあちこちを歩くだけの気力がない。
だからこうやって俺の家で2人きり、普通よりは少し豪華なご飯を囲みながらのんびりしているのが、俺たちにとっては最高のクリスマスなんだ。
「確かに雪が降ったら綺麗だろうなあ」
真っ黒の夜の中に、真っ白い雪が降る。辺りの色とりどりの景色も白に染まる。
確かにその光景は綺麗だと思う。寒いけど。
「ヤナギさんとこはいいなー。きっとチョウジならホワイトクリスマスなんだろうなー」
マツバがフライドポテトを頬張りながら言った。
「そんなにいいならひとりで行けよ」
「寒いから嫌だ」
俺の言葉に、マツバはそう答えた。
マツバは寒いのが嫌いだ。
俺も嫌いだけど、俺は単に寒さに弱いから嫌いなだけで、マツバが寒さを嫌う理由は寒さに弱いこと以外にもある。
寒いと人は凍えて、体を震わせ、腕や足をさすり、小さく縮こまる。
そうして寒さが弱まるまでじっと耐え忍ぶ。
マツバはきっとそれが嫌いなんだ。
じっとひとり、襲い来る寒さに必死で耐える。
体を小さくして、震え、自分で自分を温め、これ以上寒さなど感じないように。
ひとりで耐え続けることが嫌いなんだ。
だから俺が今日、マツバをうちに呼んだ。
恋人だから、ということがもちろんだけど、マツバがひとりで凍えないように。
うちに来るときも俺がわざわざピジョットに乗って迎えに行ったら、マツバは驚いていたけれどどこか嬉しそうだった。
マツバが凍えないためなら、俺は俺が寒いのを我慢してまでも迎えに行く。
口では迎えに行った理由を『気が向いただけだから』としか言ってないけれど。
「ここはあったかいね」
こたつ布団に頬をすりつけながらマツバが言う。
彼の紫の瞳は、どこか安心しているように、ほっとしているように思える。
俺がマツバに温かい空間を与えてやれたなら、それはとても嬉しいことだ。
今日、彼をうちに呼んでよかった。
「マツバ」
俺は少しだけ体を動かして、マツバの方に寄った。
「なに?」
マツバはこたつ布団から顔を上げて俺を見る。
そして俺はマツバのその無防備な唇に、ゆっくり自分の唇を近づけて…重ねた。
ちゅ、と小さい音が温かい空間に響く。
近づけたときと同じようにゆっくり唇を離してマツバの顔を見やれば、大きく目を見開いて頬を赤く染めていた。
「ハ、ハヤト君っ…」
戸惑っているようにマツバが俺の名前を口にした。
その気持ちは分かる。俺から、なんて滅多にないことだし。
でも、ほら、今日はクリスマスだし。
マツバが嬉しそうで俺も嬉しいし。
テンション上がっちゃったんだから、仕方ないだろ。
「ふふ、クリスマスプレゼントー」
マツバの戸惑うような、焦っているような、嬉しそうな、そんな顔がおもしろくて俺は笑いながらそう言ってみた。
「……雪降ってくれるよりもずっとずっと最高だよ」
ようやく落ち着いたのか、でも頬は赤いままマツバはそんな言葉をくれた。
温かい部屋で、バカみたいに甘いことしてる俺たちだけど、別にいいだろ。
だって、今日は恋人たちの日。クリスマスなんだからさ。





END.







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マツハヤのベタ甘なクリスマスSSでしたー
たまにはハヤトさんも素直にならなきゃね!!
ハッピーメリークリスマス!!